ゆるぐた記録日記

読んだ本、思った事、取り留めもなく書き綴るつもり。

(感想)星の瞳の君、つめたい朝焼け

触ってしまったらひびが入って壊れてしまうんじゃないだろうか、そんな儚さを兼ね備えた表紙に一目惚れして購入した豆塚エリさんの「星の瞳の君、つめたい朝焼け」。

 

危うい瞬間は気付いても気付かなくても身の回りにたくさん存在して。

それに気付こうが気付かまいが毎日は進んでいくのだけど、気づいてしまった瞬間日常からは零れ落ちてしまう。

 

豆塚さんの小説を読んだのはこれが初めてだったのだけど、とても好きな静かさだった。静かな部屋越しに外のざわめきが聞こえて、でもそんなの関係なく部屋の中では自分の手の届く範囲の時間が進んでいくだけ。

 

読破後に一番残ったのは「はだら雪のリリシズム」。「スタンド・バイ・ミー」も現実離れしすぎない浮遊感が好きだった。

誰かにとってはなんでもない物が、自分だけにはお守り、へたり込んでしまいそうな時に力をくれる物になる気持ちはよく分かる。

魔法少女が変身する時に使う魔法道具のように、それは心がキリキリする時でも和らげて一歩踏み出させてくれる。私は大丈夫だと錯覚させてくれる。

それのお守りにまつわる話「はだら雪のリリシズム」は、痛いけど乗り越えていかなきゃいけない日常と、それを乗り越える気持ちを添えてくれる非日常の切り取り方、組み合わせ方がすごく良くて、つい数度読み直して浸ってしまった。

 

豆塚さんの切り取る世界はいつもガラスの破片のように綺麗だなと思う。

好きな詩集も句集も、遠すぎず近すぎずな距離の光る瞬間を切り取っていて、すごいなと。

本当は触ったぐらいでひびが入るほど脆くなんてないのかもしれない、でもその脆さや儚さを醸し出せるとこが美しいのかもしれない。

 

 

こんな感想かもよくわからないブログが久々の更新でごめんなさい。

豆塚エリさんの「星の瞳の君、つめたい朝焼け」おすすめです。

やりきれなくなった時に、好きな話をめくると、少し和らぐかもしれません。